マーク方式の数学の問題を作ってみた。

仕事や趣味で数学の問題を解いています。その解いた問題や他に作った問題をマーク方式の問題にして出題しながら日常をつぶやきます。

入試問題を使って平方根の値を近似してみた!

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解いた数学の問題をマーク方式にして公表するブログです!管理人のRedchopperです!よろしくお願いします!

今月から入試問題を役に立てることができないか?ということを考えた記事を毎月1日に更新します。どうぞよろしくお願いいたします。m(__)m

今回は面白い問題を見つけたので、考察を付けながら記事を書いていこうと思います。

よく使われる有理数列で無理数に収束する例

大学で習う数学でよく「数列は有理数であるが無理数に収束する」ものの例として

 a_{0}=1,\ a_{1}=1.4,\ a_{2}=1,41,\ a_{3}=1.414,\ a_{4}=1.4142,\ \cdots

 \displaystyle a_{n}=(\sqrt{2}の小数第n位までの有限小数),\ \lim_{n\to \infty }a_{n}=\sqrt{2}

という数列がよく挙げられます。

これって、 \sqrt{2}の値が具体的にわかっているから作れるのであって値がわからなかったらどうするんだ?というように疑問を持ちました。

大学時代や大学院時代にも入試問題を解いていましたが、そこで出会ったのが次の問題でした。

今回の問題について①~ \sqrt{2}を近似する有理数の数列を作る~

次の問題は2004年名古屋大学の後期日程で出題された問題です。

自然数 nに対して、 a_{n} b_{n}

 (3+2\sqrt{2})^{n}=a_{n}+b_{n}\sqrt{2}

をみたす自然数とする。このとき、以下の問いに答えよ。

(1) n\geqq 2のとき、 a_{n} b_{n} a_{n-1} b_{n-1}を用いて表せ。

(2) a^{2}_{n}-2b^{2}_{n}の値を求めよ。

(3)(2)を用いて \sqrt{2}を誤差 \displaystyle \frac{1}{10000}未満で近似する有理数を1つ求めよ。

この問題を解けば \sqrt{2}に近似する有理数の数列が作れるということです。

指示通りに解いていきましょう!

(1)数列の定義から

 (3+2\sqrt{2})^{n}=(3+2\sqrt{2})^{n-1}(3+2\sqrt{2})

 =(a_{n-1}+b_{n-1}\sqrt{2})(3+2\sqrt{2})

 =(3a_{n-1}+4b_{n-1})+(2a_{n-1}+3b_{n-1})\sqrt{2}

となりますので

 \left\{ \begin{array}{ccc} a_{n}&=&3a_{n-1}+4b_{n-1}\\ b_{n}&=&2a_{n-1}+3b_{n-1} \end{array} \right.  \left\{ \begin{array}{ccc} a_{1}&=&3\\ b_{1}&=&2\end{array}\right.

となります。

(2)(1)で導かれた連立漸化式を用いると

 a^{2}_{n}-2b^{2}b_{n}=(3a_{n-1}+4b_{n-1})^{2}-2(2a_{n-1}+3b_{n-1})^{2}

 =9a^{2}_{n-1}+24a_{n-1}b_{n-1}+16b^{2}_{n-1}-8a^{2}_{n-1}-24a_{n-1}b_{n-1}-18b^{2}_{n-1}

 =a^{2}_{n-1}-2b^{2}_{n-1}

となります。また、 a^{2}_{1}-2b^{2}_{1}=9-8=1ですので、数列 \{ a^{2}_{n}-2b^{2}_{n}\}は初項1、公比1の等比数列であることがわかります。

したがって、 a^{2}_{n}-2b^{2}_{n}=1となります。

(3)これを用いると a^{2}_{n}-2b^{2}_{n}=(a_{n}+b_{n}\sqrt{2})(a_{n}-b_{n}\sqrt{2})ですので

 \displaystyle a_{n}-b_{n}\sqrt{2}=\frac{1}{a_{n}+b_{n}\sqrt{2}}

 \displaystyle \frac{a_{n}}{b_{n}}=\frac{1}{b_{n}(a_{n}+b_{n}\sqrt{2})}<\frac{1}{b^{2}_{n}}

ここで出てきた数列 \displaystyle \left\{ \frac{a_{n}}{b_{n}}\right\} が欲しい有理数の数列です。

連立漸化式から b^{2}_{n}>10000となる自然数 nを見つければ、求める有理数が1つ求まります。

ここは b_{n}>100となる最小の自然数 nを求めれば良いので、 n=4です。

このとき a_{4}=577 b_{4}=408ですので、求める有理数の1つは\displaystyle \frac{577}{408}となります。

電卓で計算をしてみると

 \sqrt{2}=1.41421356237

 \displaystyle \frac{577}{408}=1.41421568627

となっており、求めた有理数 \sqrt{2}からかなり近い値であることがわかります。

この問題を使って他の平方根の値を近似する有理数の数列は作れないか?ということですが、次のように考えれば作ることができます。

今回の問題について②~ \sqrt{3}を同じ方法で近似してみる~

最初に使った問題を次のように変更してみます。

自然数 nに対して a_{n} b_{n}

 (2+\sqrt{3})^{n}=a_{n}+b_{n}\sqrt{3}

と定義する。このとき、次の問いに答えよ。

(1) n\geqq 2のとき、 a_{n} b_{n} a_{n-1} b_{n-1}を用いて表せ。

(2) a^{2}_{n}-3b^{2}_{n}の値を求めよ。

(3)(2)を用いて \sqrt{3}を誤差 \displaystyle \frac{1}{10000}未満で近似する有理数を1つ求めよ。

数値が変わっただけですので、解く方針については全く同じです。

(1) (2+\sqrt{3})^{n}=(2+\sqrt{3})^{n-1}(2+\sqrt{3})であるので

 (2+\sqrt{3})^{n}=(2a_{n-1}+3b_{n-1})+(a_{n-1}+2b_{n-1})\sqrt{3}

となります。したがって

 \left\{ \begin{array}{ccc} a_{n}&=&2a_{n-1}+3b_{n-1}\\ b_{n}&=&a_{n-1}+2b_{n-1}\end{array}\right.  \left\{ \begin{array}{ccc} a_{1}&=&2\\ b_{1}&=&1\end{array}\right.

(2)(1)を用いると

 a^{2}_{n}-3b^{2}_{n}=(2a_{n-1}+3b_{n-1})^{2}-3(a_{n-1}+2b_{n-1})^{2}

 =4a^{2}_{n-1}+12a_{n-1}b_{n-1}+9b^{2}_{n-1}-3a^{2}_{n-1}-12a_{n-1}b_{n-1}-12b^{2}_{n-1}

 =a^{2}_{n-1}-3b^{2}_{n-1}

また、 a^{2}_{1}-3b^{2}_{1}=4-3=1となりますので、数列 \{ a^{2}_{n}-3b^{2}_{n}\}は初項1、公比1の等比数列ですので a^{2}_{n}-3b^{2}_{n}=1ということになります。

(3)(2)を用いると

 (a_{n}+b_{n}\sqrt{3})(a_{n}-b_{n}\sqrt{3})=1

 \displaystyle a_{n}-b_{n}\sqrt{3}=\frac{1}{a_{n}+b_{n}\sqrt{3}}

 \displaystyle \frac{a_{n}}{b_{n}}-\sqrt{3}=\frac{1}{b_{n}(a_{n}+b_{n}\sqrt{3})}<\frac{1}{b^{2}_{n}}

となります。先ほどの問題と同様、 b_{n}>100をみたす最小の自然数 nを求めると n=5です。

このとき a_{5}=362 b_{5}=209ですので、 \sqrt{3} \displaystyle \frac{1}{10000}未満で近似する有理数の1つは \displaystyle \frac{362}{209}となります。

これらの値を電卓で計算してみると

 \sqrt{3}=1.73205080756

 \displaystyle \frac{362}{209}=1.73205741626

となります。これも良い近似ですね!

では、どのように問題を変えれば他の平方根の値を近似できるのでしょうか?それを考察していきたいと思います。

今回の問題について③~有理数列で無理数に収束する数列を作る~

2つの問題で作った(2)の数列に注目してみます。

 \sqrt{2}を近似する有理数を求めるときは a^{2}-2b^{2}_{n}=1となるように、[tex; \sqrt{3}]近似する有理数を求めるときは a^{2}_{n}-3b^{2}_{n}=1となるように数列 \{ a_{n}\} \{ b_{n}\}を作りました。

これら2つの式に共通することは、「 \sqrt{r}の値を近似する有理数を求めるときは a^{2}_{n}-rb^{2}_{n}=1となるように数列 \{ a_{n}\} \{ b_{n}\}を作る」と良いことが予想できます。

もう1つ注目する点は最初の定義式です。

 \sqrt{2}のときは 3+2\sqrt{2}=\sqrt{9}+\sqrt{8}を、 \sqrt{3}のときは 2+\sqrt{3}=\sqrt{4}+\sqrt{3}を用いました。

ここに注目すると、 \sqrt{m^{2}}+\sqrt{m^{2}-1} n乗を使って数列 \{ a_{n}\} \{ b_{n}\}を作っていると考えられます。

よって、平方数ではない自然数 rに対して \sqrt{m^{2}-1}=k\sqrt{r}となるような自然数 m kが見つかれば、先ほど解いた問題と同じように解いていけば \sqrt{r}を近似する有理数の数列が作れます。

例えば \sqrt{5}であれば、 4\sqrt{5}=\sqrt{80}=\sqrt{9^{2}-1}ですので、 r=5のときは k=4,\ m=9として問題を次のように組み替えます。

自然数 nに対して a_{n} b_{n}

 (9+4\sqrt{5})^{n}=a_{n}+b_{n}\sqrt{5}

と定義する。このとき、次の問いに答えよ。

(1) n\geqq 2のとき、 a_{n} b_{n} a_{n-1} b_{n-1}を用いて表せ。

(2) a^{2}_{n}-5b^{2}_{n}の値を求めよ。

(3)(2)を用いて \sqrt{5}を誤差 \displaystyle \frac{1}{10000}未満で近似する有理数を1つ求めよ。

あとは同じようにしていくと \sqrt{5} \displaystyle \frac{1}{10000}未満で近似する有理数の1つは \displaystyle \frac{2889}{1292}であることが求められます。

 \sqrt{6}の近似は (5+2\sqrt{6})^{n} \sqrt{11}なら (10+3\sqrt{11})^{n} \sqrt{143}なら (12+\sqrt{143})^{n}をそれぞれ用いて数列 \{ a_{n}\} \{ b_{n}\}を作れば同様の問題が出来上がります。

いずれの数列も \displaystyle 0\leqq \left| \frac{a_{n}}{b_{n}}-\sqrt{r}\right| <\frac{1}{b^{2}_{n}}\to 0(n\to \infty )ですので、 \displaystyle \left\{ \frac{a_{n}}{b_{n}}\right\} 有理数の数列で無理数に収束します。

いかがだったでしょうか?

今回は平方根の値を近似する有理数を求める数列を作りました。

例えば \sqrt{2}の値が全く分からないときに \sqrt{2}に収束する有理数の数列の例として持ち出すのは有用かと思います。

ただ、問題を解くのは少し大変なので \sqrt{2}のような値がほしいときは開平方で求めたほうが早そうです。

開平方知らなかったらこっちでいくしかないかな?

 

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